LLP香春藩の活動報告について


                                                                                                                             2020/11/20
                                                       LLP香春藩 丸田宏幸
    

            LLP香春藩の活動報告(素案・基本事項)

 LLP香春藩はこの5年間、香春町の行く末を案じ、住民が自ら立ち上がり活動していくことを願い
下記の様な問題提起や行動を起こして来ました。いずれも住民が主体となって、これからの町づくり
の手立てとなるものと確信して行ったものです。

1 これまでの取り組み
 LLP香春藩が、これまでの5年間で研究・調査、実施、住民提起を行ったものを下記に列記します。

@ 香春町の歴史、工芸、文化の融合を目指し、香春に住む住民の誇りを掘り起こす企画展を開催。
A 誰でもが聞けて参加できる放送局、災害時も情報が届くコミュニティFM局の開設。黒字化できる
  収支計画の事業計画書を策定して、田川市及び田川郡の町村に提起を行い、田川市で電波調査
  まで行ったが、地方創生資金を活用して事業化した場合、市郡の行政が活用するという条件の収支
  見通しが立たずLLPとしては断念。
B 大地震が起きて被災したネパールの生活困難者の生活を支援するためのフェアトレイド事業の
  立ち上げの調査を行ったが、軍事政権下で事業を立ち上げることが見込めないことから断念。
C 田川の特産品として薬草の栽培の可能性とマーケティングの調査報告書の作成を行っていたが
  韓国の事業者が、他の地域を選んだため断念した。
D 香春町の農産物や生産品を提供するマルシェを開催したが継続的な催しとならず、今後の
  運営方針を考えなければならない。
E 就学援助率が高い香春町の実態を改善するため、子どものいる困窮者へ手を差し伸べる
  子ども食堂の立ち上げを行った。現在、キッチン小春ちゃんの事業として継続されている。
F 町としての機能が低下している実態を明らかにして、コンパクトシティの必要性、買い物・医療
  過疎の問題を提起したシンポジウムの開催。
G 高齢者が自己セルフで東洋医学に基づいて健康予防できる為の講演会と実態調査の協力。
H 高齢化と過疎化が進む香春町において、安心して住めるための要件は何かという高齢者を
  対象とした住民意識調査、住民が自らできること、ICTの力を活用することが可能か、などを
  明らかにしたうえでこれから進む在宅医療の取り組み方についての調査報告書を取りまとめた。
I 上記の意識調査で住民が切に困っている交通問題を最初に取り上げて、その成果があれば
  地域で様々な事業が進展するという考えで、コミュニティの充実を図るために住民が主体となる
  交通システム勉強会を立ち上げた。
J 住民の交通に関しての意識を掘り下げるために、香春町のまちづくり課の支援を受けて、交通
  問題に ついての住民の意識調査としてのワークショップ(意見交換会)を開催した。
K 住民組織による交通体制の構築が必要との考え方から、道路交通法の現行法では規制で
  縛られているため、この新たな道を開くために、福岡運輸局と協議を行い、具体的な取り組み
  内容について協議していくこととした。
L これまで、LLPで考えてきた、安心して住める町の在り方を具現化するために、小さな拠点の
  必要性を様々な場面で提示してきたことから、交通の観点を重視、先行したモデルを検討した。
M 学校統廃合に併せて、住民で行うこの新たな交通システムの確立と地域コミュニティの核と
  なる小さな拠点整備についての事業計画書の作成を行った。
  LLPは、以上のような活動を重ねてきたが、LLPの活動期間が、5年間と限られていることから
  現在進めている「小さな拠点と新たな交通システムの提起」が最後の活動となる。
  再度、強く言いたいことは、この小さな 拠点に、これまでの活動内容がほぼ集約されている。
    そこで、国としてはどの様にこの課題について取り組もうとしているのか、最新の情報について
    少し述べることとする。

2 先進的な取り組み
  一例ではあるが、東京大学高齢社会総合研究機構が2009年から柏市を中心に行った
 研究を基に20年9月30日に出版された「地域包括ケアのまちづくり」にこれからの高齢社会の
 方向性を示唆していることを紹介したい。
 このプロジェクトは、高齢者就労システムと在宅医療を含む在宅ケアのモデル化を目指して
 研究されたものである。国が進めていた地域包括ケア施策を実践的に展開し、この10年間で
 介護予防のフレイルの実証、地域ケアの役割分担の検証等を行った。
 ※フレイルとは、健常から要介護へ移行する中間の段階と言われています。具体的には
 加齢に伴い筋力が衰え、疲れやすくなり家に閉じこもりがちになるなど、年齢を重ねたことで
 生じやすい衰え全般を指しています。

(1)第1期
  最初の5年間を第1期として高齢者への学びの場の提供が、自己能力の気づきへ、それが
 生きがいや社会参加や地域貢献などの生涯現役を生む効果を上げてきた。介護予防の
 観点からフレイル予防政策が始まり、元気な高齢者を育てることにつながった。

(2)第2期
  第2期は、在宅医療に取り組み地域包括ケアの全国モデルともいえる柱組が構築された。
 ここで注目したのが生活支援の在り方で、保険対象外のいわゆる自助、互助の領域を拡大
 するための課題点の洗い出しを行った。フレイルの予防の取り組みが大きく発展したことから
 この生活支援との施策的な取り組みにつながることとなった。

(3)第3期
  第3期はこれから始まるもので、国は高齢者対策をより充実するために厚生労働省に加え
 まちづくりの観点から国土交通省と連携して新たな施策を打ち出そうとしている。2040年問題
 となっている人口減と高齢化が日本の成長に鈍化を与えることから、持続可能な施策の展開が
 必要となっている。高齢者への包括ケアはより深化が求まられ、その生活の基盤である地域は
 便利で安心して暮らせる場所にしていく必要がある。このため、コンパクトシティやネットワーク化
 という新たな政策展開が図られることとなった。このように便利で暮らしいやすい日常生活圏が
 持続可能となる仕組み作りが求められている。
 その仕組みの中心となるのが、住民であり元気な高齢者が結集する力でもある。

3 LLPの考え方
  LLP香春藩が発足時から目標としてきたもので、前述のこれまでの活動の@からLまで個々の
 課題としているが、これから超高齢化の町となる香春町に住む住民として、自助と共助が深化
 していくこと目指して、何か出来ることを一つ一つ住民に提起してきたが、根底にあるのは住民
 自らが立ち上がって、解決のために今動くことにあると思う。
(1)まちづくりと活動の場
 @からFまでは、自分のために、他人のために、地域のために、町のために仕事の場を創設して
 いくための方法論を示してきたものとなっている。地域住民の力を生み出すための展開である。

(2)地域包括の限界
 G、Hはまさにフレイル予防であり、包括ケアの今後展開の必要性を求めたものとなっている。
 Hの調査研究では、香春町の高齢者18%から回答を得て、考え方の分析が出来たものとなった。
 この中で交通問題やICTの活用のニーズ、在宅医療の不安が明らかになり、この不安を取り除く
 ために、住民で出来る自助・共助の構築を急がなければならないことを実感した。

(3)公共交通
 IからKは、Hの調査を受けて住民が望み社会に貢献したい一つの方策として、この交通問題は
 地域をまとめていくための足掛かりとなる。また、この新たな交通問題の提案には法的な壁があり
 この規制緩和に向けて動き出している。

(4)小さな拠点
 L、Mは地域生活圏の暮らしを守るための最小限の機能を、廃校となる小学校に集めようという
 考え方で、その先行的に機能するのが、Kの住民が運営する交通システムであり、その提供場所が
 この小さな拠点に位置することにある。

  以上のことを背景に、今まさに議論されようとしている、小学校跡地がこの考え方の核となって
 新たな町の方向に進むことを期待している。先ほど触れた「地域包括ケアのまちづくり」の中の
 最終章で「これから迎える超高齢人口社会のまちづくりを目指して」に触れると、ソフト・ハード
 一体のコンパクトなまちづくりとして、国の施策を実現するためには、地方における日常生活圏
 単位の地域関係者のまとまりの重要性、生活支援体制整備事業と地域型ICTインフラ、例えば
 ITを活用した遠隔診療などがあり、コロナ禍のなか、これまで難しかった取り組みが急速に発展
 しようとしている。
  この中で、市町村との連携を求める例として、医療と連携して地域ケアの柱となる小規模多機能
 居宅介護サービスの誘致は、市町村の基本的な要素をなすとしている。この小規模多機能居宅
 型施設はHでの研究報告で必要性を求めており、これからの町には必要不可欠と考える。
  これからの社会はコロナ禍もあり不安定な要因があって、予測できない状況にあるが
 この書の最後にも「このコロナの試練をチャンスに変える発想を持ちながら、新たな地域活動の
 あり方、新たな地域での人とのつながりを模索して、共に、産官学民という枠組みの下でさらなる
 課題解決型を目指す。」と東京大学高齢社会総合研究機構の教授・機構長の飯島勝矢氏は
 締めくくっている。


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